なのか?② さて、赤子だった僕はその後すくすく育ち、今では立派な青年となった。齢にして17になっただろうか。女は一人で僕を育てていた。家は山の中でポツンと建っているため、買い出しなどで度々出かけていた。赤子の体では何もできない故、成長を待った。その間何とか記憶を取り戻そうとしたが、完全とはいかなかった。やはりあの大事な約束は思い出せず、悶々と過ごしていた。ただわかったことは、僕は人間ではない。いわゆる獣人という種族だそうだ。生まれ変わりというやつだ。女、もとい母は忌み子を産んだと里の人々に疎まれ、追い出された。追い出されたが最後。おおよそ人間の生活は送れない。だが母は健気にも身を隠し、僕を育てた。この孤山に引っ越すことを余儀なくされたが、生活に困ったことはなかった。なんと感謝を申そうか。しかし、成長と共に自分の中から別の声が聞こえるようになった。この体の”本当の”持ち主の声だろう。日を追うごとに感じるその怨念。この体から出ていけと言う。母を返せと言う。解放しろ、俺をここから出せと言う。残念ながらお前をそこから出す方法は知らない。僕もやらなければならないことがある。達成すればこの体も返してやる。そう念じていれば静かになっていたが、年月が経って抑えられなくなってきた。だからこそもうここからでなければならない。名残惜しいが、時を見計らって母に伝えよう。旅に出たいと。2話-完-