なのか?③

母は涙ぐみ、心配した。
行かないでと。もっと稼いで食う寝るは今まで以上に困らせないからと。

母よ、僕は旅に出る。
この生活に不満があって出るわけではないのだ。
使命を果たしに行くのだ。
もう一人の声は日に日に強くなっている。
時間もあまりない。
親不孝にはならないと約束しよう。

「行ってしまうのね…私の愛しい子よ」
「風邪は引かないでね」
「いつでも戻ってきていいからね」
 ・
 ・
 ・
「いってらっしゃい。」

嗚呼、母よ。行ってきます。

 

こうして僕は旅に出た。
心晴れやかとはいかずとも、温かい。
もう一人の声も、湿っぽい。

帰ってくるころには僕はいないかもしれないが、
待っている母のため、もう一人の声を帰すため。
振り返らず進もう。

3話-完-

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