旅立ち

旅。
それは人を成長させるもの。
それは己の精神を昇華させるもの。
僕はどちらに当てはまるだろうか。

今目の前にいる僕とは違う”獣人”。
敵意を孕んだ眼差しが体に刺さる。
本能でわかる、僕らは相容れない存在同士。

だがその”獣人”、僕の中のもう一人をにらんでいる。

「貴様が噂の”異端児”か」

異端児、ぴったりである。

「余は貴様のような存在が許せぬ。
 輪をかき乱す者よ。」

返す言葉もない。
本来僕はここにいてはならないのだ。

「なぜそいつにすがりつく?
 お前ほどの力ならすぐに追い出せるはずだぞ小僧。」

それはもう一人に掛けた言葉。
僕だってそう思う。
長いこと旅しているからわかるのだ。
格が違うと。

“こいつの生き様を見ているだけのことさ”

もう一人が言う。
名の知らぬ君が僕に情を持っていると言うのか?

“ククク…時が来れば消える命、そう急かさなくてもよかろう?”

……。

「そう悠長なことも言っておられまい。
 もうすぐ神際だぞ。」

“そう心配するなジジイ。俺がしくじったことがあるか?”

そう言ってもう一人は僕の喉に手をかけた。
期待はしない方がよかったみたいだ。

「もうよい。失せろ。
 次に余と会うときは一人で来い。」

聞き終わるや否や意識を奪われた。

4話-完-

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